2012年12月5日水曜日

町田徹「ニュースの深層」 改革派政策スタッフもドン引き!? 石原新党との合併で自民党出身高齢議員に実権を握られた「日本維新の会」の実情(現代ビジネス)

現代ビジネス
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町田徹「ニュースの深層」
改革派政策スタッフもドン引き!? 石原新党との合併で自民党出身高齢議員に

実権を握られた「日本維新の会」の実情
2012年12月04日(火) 町田 徹
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◇全文引用


(1)
 関西を中心に政治改革の新たな旗手との期待を集めてきた「日本維新の会」が総選挙を控えて、大きく揺れている。
 関係者に取材したところ、石原新党こと「太陽の党」との合併に伴い、飲み込んだはずの自民党出身の古いタイプの政治家たちに党運営の実権を奪われてしまい、きら星のごとく結集していた改革派の政策スタッフたちがドン引き状態に陥ったのだ。
 もちろん、合併まで日本維新の会をトップとして率いてきた橋下徹氏の立場から、12月16日に迫った総選挙の投票を睨んで、まずは第3極の勢力を 結集し、少しでも多くの議席を獲得することで国政のキャスティングボードを握る狙いがあったと好意的に合併戦略を解説する向きもある。今後、新生「日本維 新の会」がなし崩し的に改革離れに走ることはないのか、われわれ有権者は選挙戦をしっかりウォッチする必要がありそうだ。

実権を握る旧「たちあがれ日本」所属議員

 「日本維新の会」は11月29日にニコニコ動画で選挙公約を発表した。その中継をインターネット放送で見て私は驚いた。
 石原代表、橋下代表代行と並んで、司会者として同党の東京本部本部長に就任したという藤井孝男参議院議員や、同じく参議院議員の片山虎之助元総務大臣がひな壇にならんでいたからだ。

(2)
 件の政治家たちは、小泉純一郎政権の規制・郵政改革路線に反対したり、以前の選挙で高齢を理由に自民党からの公認を獲得できずに同党を離れた過去を持っている。
 そして、同じ日、筆者の取材に応じた「維新の会」関係者の話は、そうした直感を裏付けるものだった。
 この関係者は開口一番、もはや「今回の選挙には、全く関心がない」という。その原因として、片山、藤井両氏のほか、園田博之衆議院議員ら旧「たち あがれ日本」所属の国会議員の名前を挙げ、彼らが実権を握ったことで「日本維新の会」の理念が大きく揺らぎ、政治改革を目指す同党らしさが急速に失われつ つある、と明かしたのだった。

最終的な脱原発の時期などは明示せず

実際のところ、冒頭で触れた11月29日公表の「日本維新の会」の選挙公約『骨太2013-2016 日本を賢く強くする」は、これらの話を裏付ける格好になっている。
 内容を見ると、「脱原発依存体制の構築」といった文言が復活するなど、旧「太陽の党」との合流時の政策合意に比べれば、改革への熱意を取り戻した かのような印象がないわけではない。しかし、それでも、「日本維新の会」が11月半ばに、「みんなの党」との間でまとめていた政策合意と比べると、大幅な 後退感が拭えない。
 例えば、「みんなの党」との政策合意における規制改革の目玉のひとつだった農業改革は、「農業の成長産業化」という農家の反発を抑える表現に置き換わった。さらに、「みんなの党」との合意では、「参加」だった「TPP」が、今回は「交渉参加」に大きくトーンダウンした。
 国民の最大の関心事である脱原発でも、「基本方針」として「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」というひと言こそ復活したものの、具体策で は、安全基準などの項目を列挙して「原発政策のメカニズム・ルールを変える」と併記するにとどまっている。最終的な脱原発の時期などは明示しておらず、選 挙が終われば何とでも取り繕って原発存続を可能とするような物言いなのである。
 これでは、各方面から玉虫色との批判が集中している、民主党政権が9月に策定した『革新的エネルギー・環境戦略』の方が「方向性が明確であり、ま ともだ」と言われてもおかしくないだろう。たとえ努力目標であっても「2030年代」と脱原発の目標時期を明確にしているからだ。

(3)

橋下氏は戦略的な観点から譲歩した?

さらに言えば、同じ第3極の中で「卒原発」を明確に打ち出した「日本未来の党」との集票競争への配慮から、耳触りのよい文言を盛り込んで見せたとの解釈も成り立つだろう。
 その半面、日頃からいたずらに勇ましい発言の目立つ石原慎太郎代表の個性が強く反映されたわけではないのだろうが、「自主憲法の制定」「(領土 の)実効支配力を強化する」「集団的自衛権の行使や領海統治などを定める国家安全保障基本法の整備」といった項目は、表現が具体的であり、大変歯切れがよ いのが特色だ。
 こうした状況について、元経済産業省のキャリア官僚で、筆者と同様に現代ビジネスの執筆陣に名前を連ねている「大阪府市統合本部」特別顧問の古賀茂明氏は、12月1日付のコラム『官々愕々 橋下氏に仕掛けられたワナ』 の中で、「弁護士である橋下氏は、これ(選挙公約で多用した霞が関文学的な文言のこと)に騙された訳ではなく、このからくりを十分認識した上で、ぎりぎり 言い訳できるラインだと考えて飲んだのだろう」と述べて、橋下氏は戦略的な観点から譲歩したに過ぎないと同氏を庇う姿勢をみせている。
 また、元財務官僚で、やはり本コラムの執筆陣の一人である高橋洋一嘉悦大学教授も従前と変わらず、ツイッターを利用して、遊説に走り回る橋下徹氏の金融政策を巡る主張の側面からの理論的支援に努めているようだ。

自民党復党を狙う旧「たちあがれ日本」出身議員

しかし、それでも、旧小泉純一郎政権のサポート役だったグループを中心に、橋下政権の誕生を目指して大阪に結集していた政策スタッフたちがドン引き状態になっていることは否定できない趨勢のようだ。
 象徴的なのは、古賀氏と同じように大阪府市の特別顧問で、橋下氏のために原発ゼロ政策作りに奔走していた環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏の立ち居振る舞いだ。
 飯田氏は、早々に「維新の会」と一線を画して、嘉田由紀子滋賀県知事が党首として設立した「日本未来の党」の結党に参加し、同党の代表代行に就 任。これを受けて、同党は12月2日、飯田氏に公認を与え、今回の衆議院議員選挙に山口1区の候補として出馬させる方針を発表した。

(4)
 紙幅もないので、詳しくは紹介できないが、「日本維新の会」と比べれば、「卒原発」と「脱増税」を選挙公約の大きな柱に据えた「日本未来の党」の主張は単純明快でわかり易い。
 また、筆者の専門の経済分野に限ると、「日本維新の会」が「太陽の党」との合併を優先した結果、取り残されて独自路線を採らざるを得ない立場となった「みんなの党」の選挙公約『アジェンダ2012』は、主張の内容も実現へ向けた具体的な戦略も論理的で理解し易い内容だ。
 第3極の中での勢力の結集に拘る余り、緒戦でパートナー選びと路線選びの両方で失敗した形となった橋下「日本維新の会」は、果たして劣勢を覆せるのかどうか。予断を許さない状況である。

著者:町田 徹
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