原発発電の本当のコスト!!! (大島堅一立命館大学教授)
植田和弘さんの記事があり、これをご紹介します。
これまでの政府の計算とは、大分、違います。
以下の二本の記事を、読む事をお勧めします。
ECO JAPAN (BPnet)
記事タイトル
『原発の本当の発電コストを考える(2011年5月30日)』
2011年5月30日
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110526/106571/?P=1
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110526/106571/?P=2
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110526/106571/?P=3
ご参考に、なさって下さい。
『実は誰も分かっていない原発のコスト(2011年6月9日)』
聞き手/文 中西清隆(日経エコロジ-)
事 故をきっかけに安いと思われてきた原発のコストに対する疑問が膨らんでいる。大島堅一立命館大学教授は、事故発生前から公開データを駆使した独自の手法で 原発の実態的な発電コストを算出し、世に問うてきた。試算結果はこれまでの政府試算とは大きく異なる。浮かび上がったコスト構造は原発が抱える未解決の問 題を突きつけるものだった。
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110608/106639/
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110608/106639/?P=2
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110608/106639/?P=3
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110608/106639/?P=4
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110608/106639/?P=5
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110608/106639/?P=6
★最近の政府試算では、原発の発電コストは16円~20円の試算が発表されています。どうしてそうなるのかと言うと、これまでバックエンド費用を18・8兆円としてきましたが、今回の原発事故などを加味して、『74兆円』と変更したためです。
このように、前提を変えると大幅に原発の発電コストは上昇します。
一般的には、どこの国でも補助金なしでは、事業として成り立たないと言われています。
記事タイトル
『原発の本当の発電コストを考える(2011年5月30日)』
2011年5月30日
(1)
災害確率か予防原則か
福島第1原発の事故は国内はもちろんのこと、世界に大きな影響を与えた。未だ収拾の見通しが明確に立っているわけではない。放射能汚染の実態把握も十分とは言えず、今後被害がどれほどになるのか予断を許さない。エネルギー供給の面では今夏の電力不足への不安が顕在化しているが、与えた影響はそれだけにはとどまらない。2030年までに原発を13基新増設するとしていた政府のエネルギー基本計画を維持するのは難しくなった。菅直人首相は「白紙からの見直し」を表明している。
何よりも、電力供給施設としての原発の安全性や信頼性が根底から疑われることになった。原発の過酷事故(severe accident)への対応策ができていなかった。多重保護という「建前」が機能しなかったのだから、安全基準や審査体制にも不備があったと言わざるを得 ない。今回の惨事で図らずもそのことが明らかになった。今回被災しなかったほかの原発の安全性も問われてくるだろう。
政府は浜岡原発の停止要請をした。想定される東海地震の震源域の真上に立地しており、大きな地震に襲われる可能性が特別に高いことを根拠にあげている。ほかの原発は現時点で30年以内に震度6以上の地震が起こる確率が1%以下だとし、直ちに停止は求めないという。
ただ、今回の震災の教訓は、災害発生確率が低いことを理由に安全対策のレベルを下げていいということにはならないということである。
東北沿岸では今回と同程度の規模の津波が平安時代の貞観地震(869年)の際に襲来していた。この事実を突き止めた産業総合技術研究所の岡村行信博士が 政府の審議会の場で強く警告を発していた。警告を受け入れて対策を講じていれば、今回の震災による被害はかなり軽減できたはずである。
つまり、今回の津波は想定外ではなかった。千数百年に1度は起こる津波だったのである。しかも地震や津波がもたらす被害は想定可能なものだ。気候変動の ように具体的に何が起こるか正確に予見できない類のものではない。その意味で、津波や地震への対策は無知(unknown)や不確実 (uncertain)な下での意思決定ではない。
いつ起こるかを正確に予測はできなくてもいつかは起こる。明日起こるかもしれないし、数十年後に起こるかも知れないのである。予防原則 (precautionary principle)を適用するならば、過去の経験と現在の科学的知見が示唆する最大の地震や津波への対処策を講じる必要がある。
(2)
政府推計と大島推計
最大の対策をとっても残る危険はある。我々の自然に対する知識はもとより完全ではない。原発のあり方についてその分野の専門家だけの議論で決めるのは適 切ではない。現在の科学的知見をもとに安全性に関してより広い観点から議論する場がなくてはならない。どこまで危険を軽減できればよいのか、最終的には社 会的、政治的意思決定の問題になる。安全対策の強化は不可避だが、これは原発の安全対策費の上昇を意味する。つまり、発電コストが上昇する。これまで原発は通説的には安価といわれてきた。政府が原発を推進してきた大きな理由もそこにあった。しかし、その根拠はそれほど堅固なものとは言えない。
原発の電力が安価だというのは、2004年に出された総合資源エネルギー調査会電気事業コスト分科会の報告書が根拠になっていた(表参照)。しかし、原 発の発電コストは他の電源の発電コストよりも高いという研究結果が最近、立命館大学の大島堅一教授によって出されている。
●電源別発電コスト(円/kWh)

(1)電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書(2004年1月23日) 設備規模、設備利用率、運転年数に想定値が置かれている。割引率3%で試算。 (2)大島堅一『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新報社(2010年)
なぜ両者の推計にこれほど大きな違いが生じているのだろうか。推計方法の違いと用いるデータの違いをまず指摘できる。
報告書推計では、モデルプラントを想定して発電に要する種々の費用を集計している。これに対して大島推計は実績値である。電力各社が公表している『有価 証券報告書』に基づいて電源別発電コストを推計する方法が、同志社大学の室田武教授によって開発され、大島教授が発展させた。
推計の正確性には、いずれの方法についても議論があるかもしれない。モデルプラント方式では様々な前提が仮定されている。実績値は「実態」が反映されているわけだが、その場合も集計範囲などで何らかの標準化を図ることは避けられない。
(3)
原発の見えないコスト
いずれの方法をとるにしろ、発電コスト比較で最も重要なのは、発電に伴うすべてのコストを勘定に入れることである。これは誰もが納得することだろうが、実際には容易ではない。例えば発電のために何らかの資源を海外から購入するとしよう。化石燃料でもウランでもよい。その採掘現場がすさまじい環境破壊を起こしていたとして、何 も対策が取られていない場合には、購入した資源の価格には環境損害費用が含まれていない。環境損害の被害者や社会に転嫁されているのである。だが、規制が かかったり、賠償問題に発展したときには、そうした費用を価格に反映させる必要が出てくる可能性がある。
しばしば推計が困難と指摘されるバックエンド(使用済み核燃料の再処理や放射性廃棄物の処分など)費用だが、報告書推計はこれを発電コストに算入してい る。その点は評価できるが、問題はバックエンド費用の見積もりが、核燃料サイクル政策が政府の計画通りに進むことが前提になっている点である。周知のよう に、核燃料サイクル政策は不確実性がきわめて大きく、現にまったく計画通りには進行していない。したがって、バックエンド費用の見積りは過小評価の疑いが 大きい。
大島推計は電力会社の実際の支出をまず集計している。発電に要する電力会社の支出は『有価証券報告書』に記載されている。しかし、電力会社の支出費用だ けでは原発での発電は成り立たない、と大島教授は指摘する。発電技術の開発や発電所の立地や維持に巨額の財政支出が充てられている。立地地域への財政支出 は火力や水力などに対してもあるが、原発はいわゆる電源三法交付金によってほかの電源に比べてきわめて手厚い財政支出がなされている。
もしこの財政支出が原発に不可欠な支出ということであれば、仮に電力会社の費用にはカウントされていなくても(電力会社の『有価証券報告書』に計上されていなくても)、原発の発電コストの一部として計上すべきであろう。
すべての電源に対して大島推計では、財政支出を含めた発電に要する総費用を集計している。すると原発は最も高価な電源ということになる(表の「財政支出 を含む総計値」)。原子力発電は出力調整ができないため揚水発電で補完せざるを得ないと考えるとさらに高価になる(表の「原子力+揚水」)。
大島推計に基づくならば、今回の事故によって原発の安全性に疑問符がついただけでなく、これまで喧伝されてきた経済性も疑わしいということになる。原発 の経済性は巨額な財政支出による下支えがあって初めて成り立つ。「安い」というこれまでの評価は国家によってつくられた虚構と言わざるを得ない。
原発が高価な電源ということになるならば、原発を推進してきた論拠の1つは崩れることになる。それでも原発を推進する場合、推進の論拠はどこにあるのだろうか。
いずれにしろ、発電コストの徹底的な検証は、今後のエネルギー政策を考える前提と言わなければならない。
『実は誰も分かっていない原発のコスト(2011年6月9日)』
聞き手/文 中西清隆(日経エコロジ-)
(1)
聞き手/文 中西清隆(日経エコロジ-)
事故をきっかけに安いと思われてきた原発のコストに対する疑問が膨らんでいる。大島堅一立命館大学教授は、事故発生
前から公開データを駆使した独自の手法で原発の実態的な発電コストを算出し、世に問うてきた。試算結果はこれまでの政府試算とは大きく異なる。浮かび上
がったコスト構造は原発が抱える未解決の問題を突きつけるものだった。
エネルギー政策の核心だった原発
――これまで原発を推進してきた大きな理由は「発電コストが安い」からでした。資源調達の安定性と併せて国民や産業界がそう信じていたから、「原発に頼らざるを得ない」という合意があったのだと思います。
大島堅一氏(以下、大島) 私は環境経済学の観点からエネルギー政策の研究を続けてきましたが、自分で研究を始めるまでは私も「原発は安い」のだろうと思っていました。

大島 堅一(おおしま けんいち)
立命館大学国際関係学部教授。1967年福井県生まれ。92年一橋大学社会学部卒業、97年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。専門は環境経済学、環境・エネルギー政策論。高崎経済大学助教授、立命館大学准教授などを経て、2008年より現職。
立命館大学国際関係学部教授。1967年福井県生まれ。92年一橋大学社会学部卒業、97年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。専門は環境経済学、環境・エネルギー政策論。高崎経済大学助教授、立命館大学准教授などを経て、2008年より現職。
実際、原発に対する財政支出は研究開発費や立地対策を合わせて年間約4000億円とかなりの額に上ります。そこで、こうした費用まで加えた原発の本当の コストはいくらになるのだろうかと関心が次に湧いてきました。電気料金には含まれない、税金として国民が負担している部分があるわけです。
(2)
聞き手/文 中西清隆(日経エコロジ-)
事故をきっかけに安いと思われてきた原発のコストに対する疑問が膨らんでいる。大島堅一立命館大学教授は、事故発生
前から公開データを駆使した独自の手法で原発の実態的な発電コストを算出し、世に問うてきた。試算結果はこれまでの政府試算とは大きく異なる。浮かび上
がったコスト構造は原発が抱える未解決の問題を突きつけるものだった。
エネルギー政策の核心だった原発
――これまで原発を推進してきた大きな理由は「発電コストが安い」からでした。資源調達の安定性と併せて国民や産業界がそう信じていたから、「原発に頼らざるを得ない」という合意があったのだと思います。
大島堅一氏(以下、大島) 私は環境経済学の観点からエネルギー政策の研究を続けてきましたが、自分で研究を始めるまでは私も「原発は安い」のだろうと思っていました。

大島 堅一(おおしま けんいち)
立命館大学国際関係学部教授。1967年福井県生まれ。92年一橋大学社会学部卒業、97年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。専門は環境経済学、環境・エネルギー政策論。高崎経済大学助教授、立命館大学准教授などを経て、2008年より現職。
立命館大学国際関係学部教授。1967年福井県生まれ。92年一橋大学社会学部卒業、97年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。専門は環境経済学、環境・エネルギー政策論。高崎経済大学助教授、立命館大学准教授などを経て、2008年より現職。
実際、原発に対する財政支出は研究開発費や立地対策を合わせて年間約4000億円とかなりの額に上ります。そこで、こうした費用まで加えた原発の本当の コストはいくらになるのだろうかと関心が次に湧いてきました。電気料金には含まれない、税金として国民が負担している部分があるわけです。
●表1 電源別の発電単価(実績)

(3)
大島 10年9月に原子力委員会でこの試算を発表したとき、「揚水発電はすべてが原発の電 力貯蔵ではない」という反論がありました。もちろん、それに対しては、(電源別の)比率を教えてくれれば計算し直したいと思いますが、実態から考えて傾向 として大きな違いはないのではないかと推測しています。
大きな財政支出
――以上は電力会社の原価、つまり消費者が電気料金として負担している部分です。これに財政支出を足し合わせないと本当のコストは見えないと先生は考えておられるわけですね。
大島 そういうことです。電力への財政支出には一般会計のエネルギー対策費とエネルギー対策特別会計があります。
エネルギー対策特別会計は、田中角栄内閣時代につくられた電源開発促進対策特別会計がベースになっており、日本の原発開発推進の財政的な裏付けになって きました。電気料金に課される電源開発促進税が同特別会計に直入する仕組みでした。金額は年度により異なりますが、ざっくり4000億円程度です。
特別会計は原発だけを対象としたものではありませんが、中身を見ると実態として大部分が原発関連の技術開発と立地対策に充てられてきたことがわかります。立地対策は国から立地自治体に配賦する電源三法交付金がよく知られています。
毎年度の『國の予算』を基礎に一般会計のエネルギー対策費とエネルギー対策特別会計(旧電源開発促進対策特別会計)の費用項目を可能な限り電源別に再集 計して、当該年度の電力9社の総発電量(送電端)で割ります。こうして算出した電源ごとの発電量当たり財政支出単価(技術開発と立地対策の合計、 1970~2007年平均)をみると、火力と一般水力がともに0.1円/kWhなのに対して原子力は2.05円/kWhにもなります。財政支出が原発にい かに手厚いかがわかります。
というわけで、財政支出を加えた総合の発電コスト(1970~2007年平均)は一般水力が3.98円/kWh、火力が9.9円/kWhで原子力は 10.68円/kWh。揚水発電とのセットで考える「原子力+揚水」は12.23円/kWhになります。財政まで加味したコストは、原発が一番高いわけで す。
――コストだけを見ると一般水力が一番安いわけですが、立地や自然環境への負担などから、もう大型のダム式水力をつくるのは難しいと言われます。過去のコストだけで将来の電力を選ぶこともできません。
大島 その通りですが、原発コストの問題はむしろ今後さらに膨らむ恐れがあることです。
●表2 財政支出を含めた電源別総合単価
(4)
再処理と廃棄物
大島 今回の事故で安全対策や補償費用(保険)などの面から原発のコストは上昇するとの見方が出ていますが、事故が起こる前からコスト上昇要因は隠れていました。いわゆるバックエンドといわれる部分のコストです。バックエンドとは使用済み燃料の取り扱いを指します。これには2つの選択肢があります。ひとつはそのまま放射性廃棄物として埋設処分する方法(直接処 分)。もう1つは、再処理によって使用済み燃料に含まれているプルトニウムとウランを抽出して再び燃料として活用する核燃料サイクルと呼ばれるものです。
日本の原子力政策ではこれまで、使用済み燃料を全量再処理する方針を掲げてきました。国内では09年から、再処理して取り出したプルトニウムを混合した MOX燃料(混合酸化物燃料)を軽水炉で使うプルサーマルが始まりました。福島第1の3号機もその1つです(10年10月からプルサーマルの営業運転)。 今は再処理を英国やフランスに委託していますが、最終的には国内で全量再処理する計画で、国策会社の日本原燃が青森県六ヶ所村に再処理工場を建設中です。
プルサーマルを前提にしたバックエンド費用の試算を、04年に政府の総合資源エネルギー調査会で報告しています。六ヶ所再処理工場を40年動かすとし て、建設・操業・廃止を含めた再処理費用が11兆円。放射性廃棄物の処理・貯蔵・処分やMOX燃料加工など、関連するほかの費用を合わせると18兆 8800億円という数字でした。
試算はプルサーマル計画が進むなか、2000年代前半の電力自由化論議などを背景に、宙に浮いていたバックエンド費用の負担制度をどうするかの議論から 出てきました。そして、この試算をベースに06年からバックエンド費用を電気料金に上乗せする形で徴収が始まっています。『有価証券報告書総覧』の記載か ら計算した1世帯1カ月当たりの負担額は06年で275円、07年で240円でした。消費者はあまり気づいていないかも知れませんが、この時点で原発に関 する追加負担があったわけです。
問題は今後も追加的に負担が増えていく可能性があることです。というのは、試算に盛り込んだバックエンド費用は、今後想定される事態の一部しか反映されておらず、見積額自体も不確実性が非常に大きいためです。
●表3 電気事業連合会によるバックエンドの費用推計

(5)
12兆円のリターンは9000億円
大島 例えば、再処理費用の試算11兆円には建設中の六ヶ所再処理工場で処理する分しか反 映していません。ですが、年間に発生する使用済み燃料はウラン換算で1000t以上あると言われるのに対して、六ヶ所の再処理能力は年間800tしかあり ません。これまでの原発操業で発生し、保管されている大量の使用済み燃料まで含めて再処理しようとしたら、建設中の工場1基で足りないのは明らかです。し かし、第2再処理工場による再処理は試算に入っていません。建設のメドが立っていないからというのが理由です。全量再処理の方針と整合性がとれていませ ん。しかも、「11兆円」に限っても再処理工場の稼働率を100%と想定したもので現実的なものとは言えません。フランスのラアーグ再処理工場の場合、07 年の実績は56%程度でした。第一、六ヶ所は計画ではとっくに営業運転しているはずでした。トラブルなどによる度重なる延長で、操業開始予定は今のところ 2012年。当初7600億円のはずだった建設費用はこれまでに2兆円以上に膨らんでいます。
仮に方針通りに全量再処理を推進することになれば、追加コストが電気料金などに跳ね返ってくるのは避けられないと思います。
――核燃料サイクルの確立は、再処理による「国産燃料」の確保が目的のはずです。
大島 しかし、経済合理性ははなはだ疑問です。六ヶ所再処理工場で40年間に使用済み燃料
3万2000tを再処理するのに11兆円かかるというのが試算です。さらにMOX燃料加工に1兆1900億円かかります。こうして12兆円以上かけて獲得
できるMOX燃料にどれだけ価値があるのかというと、ウラン資源換算で9000億円程度という数字が政府の審議会で報告されています。本当にそうなのかと
今でも疑問に思っていますが、その資料を見たとき我が目を疑いました。エネルギー安全保障上重要だという理屈が本当に成り立つのでしょうか。
使用済み燃料から燃料を取り出す核燃料サイクルでは、プルサーマルよりずっと燃料転換率が高いとされる高速増殖炉の実用化を目指して、日本は莫大な研究 開発費をつぎ込んできました。しかし、国内では原型炉「もんじゅ」が事故を起こし、世界的にも実用化のメドは立っていません。原発関連の財政支出ではこう した研究開発費が大きいわけですが、今後これらをどう位置づけていくのか、どうするのかも大きな論点だと思います。
(6)
誰も知らない最終処分費用
――放射性廃棄物の処分費用はどうでしょう。今回の福島第1原発の事故で、使用済み燃料が原発建屋内のプー
ルで保管されている事実が世間的に明らかになりました。それらを再処理したとしてもその過程で高レベル放射性廃棄物は出てきます。計画では、ガラス固化体
に封じ込め、何十年か冷却後(中間貯蔵)、地中深くに埋設する地層処分することになっています。
大島 電気事業連合会によるバックエンド試算では、高レベル放射性廃棄物処分に2兆5500億円を見積もっており、そのほか再処理工場で発生するTRU(超ウラン元素)廃棄物の処分などが現在の電気料金に含まれています。
しかし、高レベル放射性廃棄物やTRU廃棄物の地層処分は、世界的に未だにほとんど実績がありません。国内では02年から地層処分地候補を交付金付きで公募していますが、正式に名乗りを上げた自治体はありません。
フィンランドで始まった地層処分場建設をテーマにしたドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』が話題になりましたが、高レベル廃棄物の放射能が天然鉱物並みにまで下がるには何万年も要するという話もあります。だとしたら、誰がどうやって管理できるのでしょう。
いずれにせよ処分地が決まらず、具体的な計画のない現状での試算には大きな疑問があります。地層処分には技術的、社会的に解決しなければならない課題が山ほどあり、いくらかかるかわからないというのが本当のところでしょう。
政府の説明でもバックエンド事業は数十~数百年の事業としていました。しかし、それならなおのこと早期に費用負担制度を設計しなければ、後世に負担だけ を押しつけることになりかねない。それができない原発のコスト構造が本当の問題だと思います。仮に今すぐ原発をすべて廃止しても、大量に蓄積された廃棄物 の問題から逃げることはできません。
再処理費用もそうですが、廃棄物の最終処分を含めたバックエンド費用はまだ確定していません。見えてきた段階で順次、追加的に消費者の負担が増えていく仕組みだったわけです。
そして今回の事故です。発生した大量の汚染水の処理など収束までにかかる費用さえ見えていません。被害補償や廃炉はどうなるのか。将来起こりうる事態を想定した対策や補償のためのコストをどう考えるかもいずれ大きなテーマになるはずです。
これから日本のエネルギー政策を再検討する際、重要な論点として原発のコストをもう一度、洗い直す作業は欠かせません。「原発は安い」は破綻しています。
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