2012年3月9日金曜日

日本一危険!!「玄海原発1号機」(2)ブログ「eirene’s memories 」から



eirene’s memories (ブログから全文転載)
2011-06-20
■[放射能]玄海原発は爆発する
http://d.hatena.ne.jp/eirene/20110620/1308555942

*後記:東京新聞・特報面(7月2日)も、玄海原発1号機の危険性を取り上げた。下記リンク先に記事を引用したので、そちらもご覧ください。
   http://d.hatena.ne.jp/eirene/20110702
   (アクセス数が増えたので、注。↑のタイトルは、週刊現代の元記事そのままのタイトルです。「中性子照射脆化」の問題は、以前から指摘されていた。ようやく週刊誌の記事になったという感想を抱いている。たとえば『老朽化する原発 技術を問う』原子力資料情報室、2005年、57-64頁に、井野博満さんの解説がある。また、井野博満「進行する原発の老朽化―原子炉圧力容器の照射脆化を中心に―」、井野博満「材料は劣化する 大惨事の温床」、原発老朽化問題研究会『まるで原発などないかのように』現代書館、2008年、71-128頁も参照)
   (注2 「原発老朽化問題研究会」が「原子炉の照射脆化、脆性破壊に関する検討」のパワーポイント資料を公開している)
   (注3 こちらのブログも玄海原発1号機の危険性を指摘している。アップされた佐賀新聞・投稿欄の記事も参照。http://genkai-saiban.at.webry.info/201106/article_2.html
   (注4 フジテレビの特集。玄海原発再稼働。http://www.youtube.com/watch?v=7yWt43E9jvE
   (注5 玄海原発破局的事故のシミュレーションの一例。「佐賀県玄海原子力発電所におけるプルサーマル事故被害予測」http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/genpatu/GotoYoko.pdf
    今週の週刊現代(7月2日号)で、井野博満・東大名誉教授(金属材料学)が警告している。現在稼働中の玄海原発1号機は「中性子照射脆化」という現象によって、原子炉の圧力容器が壊れ、爆発する危険が高いという。
    一部を引用させていだだこう。
   
    「原子炉は老朽化するにつれ、圧力容器が中性子線によって脆化=劣化していきます。すると、ある条件に陥った場合に、容器がバリン、と割れてしまう危険性があるのです。
    圧力容器の破壊は、原発にとって究極の大事故と言うべきものです。圧力容器が割れたら核反応の暴走を防ぐ手立てはほとんどなくなります。原子炉が、福島第一原発でも起きなかったような大爆発を起こすのです。その危険が、いま玄海原発(佐賀県・九州電力)に迫っています。
    そう指摘するのは、金属材料学の権威で、東京大学名誉教授の井野博満氏だ。」
   (中略)
    「75年に稼働した玄海原発1号機は、いまや日本一危険な原子炉であるといっても差し支えありません。なぜなら、地震や故障など、何らかの原因で通常の冷却機能が停止し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動して原子炉圧力容器が急冷されると、その際に容器そのものが破壊されてしまう危険性があるからです。
    玄海原発1 号機のような加圧水型軽水炉(PWR)は通常、圧力容器内が150気圧、300度以上の高圧・高温で運転されています。もし、この150気圧の圧力容器が 壊れ、爆発したらどうなるか。容器内の放射性物質はすべて噴出し、空高く舞い上がり、広大なエリアに降り注ぐことになります。福島第一どころか、チェルノブイリ以上の大惨事になるのは間違いありません。
    では、なぜそれほど玄海原発1号機が危険なのかを説明していきましょう。
    原発の老朽化をはかるうえで重要な指標に、圧力容器の「中性子照射脆化」というものがあります。原子炉内で核分裂が起きると、炉内に発生し た中性子が飛んで、圧力容器の内壁にぶつかり、金属にダメージを与えることになります。年月がたつにつれて、これが圧力容器を脆くしてしまう。それが中性 子照射脆化と呼ばれる現象です。
    一般に原子炉というと、非常に頑丈で、何か特別な材料でできているように思われがちですが、実はまったくそんなことはありません。圧力容器 は鉄にニッケルやモリブデンなどを多少加えた鋼でつくられていて、配管にいたってはステンレス製で、これは家庭用の流し台の素材と同じです。
    原子炉というのはそういうごくありきたりの金属でできています。したがって、他の一般的な機械と同様、経年によってガタもくれば、老朽化もする。しかも、その老朽化において原発特有の原因があり、それが中性子照射というわけです。
    では、その脆化=劣化とはどういうものなのでしょうか。簡単に言えば、中性子線によって金属の柔軟性・弾力性が失われて"硬く"なり、壊れやすくなる、ということです。
    人体にたとえれば、動脈硬化によって血管が破れやすくなるのをイメージしてください。金属の場合、劣化が進むと、「ある温度」(脆性遷移温度と言います)より低くなると、まるで陶磁器が割れるように、小さな力であっさりと割れてしまうようになります。この現象が、玄海原発1号機のような老朽化原子炉では進んでいるのです。
    通常、鋼の脆性遷移温度はマイナス20度くらいです。しかし、中性子線を浴びることによってこの温度がだんだんと上昇していきます。
    この温度が高いほど、原子炉は危険になります。なぜなら、地震等で緊急炉心冷却装置が作動し、圧力容器を冷やさねはならなくなった場合、この「冷やす」という必要不可欠な操作自体が、危険を招くことになるからです。
    玄海原発1号機の場合、この温度が、なんと「98度」になっているのです。
    ガラスのコップに熱湯を注ぐと、割れてしまいますよね。これはコップの内側と外側の温度差によって生じる力に、ガラスが耐えられなくなるからです。
     原子炉の場合は、これと逆になります。高温の原子炉の中に、緊急冷却のために水を入れる。すると、それによって圧力容器が破壊されてしまう。「脆性遷移 温度」が高いということは、その際、より早い段階で容器が壊れる危険性が出てくる、割れやすい、ということになります。
    ちなみに九州電力が公表している玄海原発1号機の脆性遷移温度は、76年が35度、80年が37度、93年が56度でした。ところが最新の09年の調査で、それが一気に98度へと跳ね上がりました。
    なぜこれほど急激に上昇したのか原因は不明です。ただ、圧力容器の鋼材に銅などの不純物が混ざっていると、老朽化が早く進み、この温度が高くなることがわかっています。以前は関西電力の美浜原発1号機の脆性遷移温度が最も高かった(81度)のですが、ここの圧力容器には銅成分が少なからず含まれています。
    玄海原発の場合、単純には説明のつかないところがありますが、どうも鋼材そのものが均一な材質ではない、という仮説が成り立ちそうです。つまり、圧力容器自体が一種の不良品だった可能性も捨て切れません。」
   (中略)
    「もしも玄海原発1号機が爆発を起こした場合、周辺にどれほどの被害を及ぼすのか。元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二氏は、こう語る。
    原子炉の脆性破壊は、いまだかつて世界が経 験したことがない、巨大な事故になります。福島第一の事故は深刻ですが、それでも放射性物質の9割は圧力容器内に残っていると思われます。しかし、脆性破 壊で爆発が起きれば、圧力容器は空になり、ほぼすべての放射性物質が放出されてしまいます。被害は玄海原発がある九州だけでなく、東は大阪にまで及ぶでしょう。大阪は現在の福島県の一部のように、避難区域になって住めなくなります。しかも、事故の進展が早いので、退避することも難しい。さらに、被害は中国など近隣のアジア諸国はもちろん、欧米にまで及ぶことになるでしょう
    「呆れたことに、原子力安全・保安院は、玄海原発1号機の異様に高い脆性遷移温度のことを、昨年12月に私たち「原発老朽化問題研究会」が指摘するまで、把握していませんでした。
    九州電力はこの情報を保安院に伝えておらず、保安院も電力会社に問い合わせる義務がないので知らなかったと言うのです。福島第一原発の事故で、原子力の管理・監視態勢がまったく機能しなかったことが問題になっていますが、ここでも同じことが起きている。
    安全性が顧みられないうちに、日本の原発の老朽化はどんどん進んでいます。
    脆性遷移温度が危険城にあるのは玄海1号機だけではありません。
    美浜1号機は81度、同2号機が78度、大飯2号機が70度、高浜1号機が54度と、ワースト2位から5位まで、福井県にある関西電力の原子炉が占めています。
    また、6位の敦賀1号機(日本原子力発電・51度)も福井にあります。
    老朽化原発は一刻も早く、廃炉にする必要があります。玄海1号機のように、本来40年の使用を想定していたのを強引に60年に延長して使おうなどというのは、もってのほかです。」
   
玄海原発の爆発で、西日本は終わる。こんな危険が専門家によって警告されているにもかかわらず、玄海原発1号機は動いている。休止中の2、3号機も再稼働に向けた準備が進んでいる。
    これほどのリスクを冒して、電力の確保のために原発を動かすなんて、正気の沙汰ではない。
    玄海原発は、一刻もはやく廃炉にすべきであろう。
   
   http://www.asahi.com/national/update/0527/SEB201105270004.html
   玄海原発、想定以上の劣化か 専門家指摘「廃炉に」
    九州電力玄海原子力発電所1号機(佐賀県玄海町)の原子炉圧力容器の劣化が想定以上に進んでいる恐れのあることが、九電の資料などからわかった。九電は「安全性に問題はない」とするが、専門家は「危険な状態で廃炉にすべきだ」と指摘。1号機は稼働中で、反原発団体は原子炉の劣化を危険視している。
     原子炉は運転年数を経るにつれ、中性子を浴びて次第にもろくなる。その程度を調べるため、電力各社は圧力容器内に容器本体と同じ材質の試験片を置き、も ろさの指標である「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」を測っている。温度が上がるほど、もろさが増しているとされる。
    1975年に操業を始めた玄海原発1号機は九電管内で最も古い原発で、想定している運転年数は2035年までの60年間。脆性遷移温度は76年、80年、93年に測定し、それぞれ35度、37度、56度だった。ところが、09年には98度と大幅に上昇した。
    九電はこの測定値から、容器本体の脆性遷移温度を80度と推計。「60年間運転しても91度になる計算で、93度未満という新設原子炉の業界基準も下回る数値だ」と説明している。
   
   http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/244357
   玄海原発1号機 想定超す劣化 九電は「安全」強調
    九州電力玄海原子力発電所1号機(佐賀県玄海町)原子炉の「脆化(ぜいか)」と呼ばれる老朽化が、従来想定を超えていることが27日分かった。九電は想定データを上方修正した上で「想定を超えているが、安全性は保たれている」と説明している。
    玄海1号機は1975年10月運転開始。現在事故や定期検査などで停止せず稼働中の国内原発では、関西電力美浜原発2号機(福井県、72年運転開始)に次ぎ、2番目に古い。原発の長期運転をめぐる議論に影響が出ることが予想される。
    核反応で中性子を浴び続ける原子炉内にある測定用の鋼鉄片の温度から脆化の状況が分かる「脆性(ぜいせい)遷移温度」が、2009年4月時点で従来想定を最大20-30度程度上回る98度だった。
    九電が過去測定した温度は35度(76年)、37度(80年)、56度(93年)。運転開始30年を前にした03年、国に提出した高経年化 技術評価書のグラフでは、09年前後の時点での温度を誤差を含め70度前後に想定していた。九電は09年の測定結果を受け、測定値に沿った想定に上方修正 したという。
     温度が高いほど脆化が進んでいることを示し、緊急時に冷却水を注入する際に炉心が損傷を受ける恐れがある。ただ、九電は原子炉そのものの現在の遷移温度 は80度程度、60年運転を続けたとしても91度と予測。新設原子炉の基準である93度を下回っているとしている。
   ■「絶対安全」ではない
    京都大原子炉実験所の義家敏正教授(照射材料工学)の話 鋼鉄製の圧力容器は約500トンの重さで厚さは10センチある。予想を超えた脆性 遷移温度がただちに緊急の炉心冷却時に問題となるとは考えないが、メーカーが言うような「絶対安全」ではないだろう。長期の中性子照射による炉心劣化は研 究者でも不明な点が多い。福島第1原発事故でも一時、緊急冷却された。その影響を検証し、今後の高経年化原発の評価につなげていくべきだ。
   
   http://news.ameba.jp/20110526-112/
   玄海原発は、浜岡より危険な原発だった!
   「玄海原発1号炉は日本一危険な原子炉といっていいでしょう」
    こう断言するのは、井野博満・東大名誉教授(金属材料物性)である。メルトダウンした福島第1原発より、停止が決まった浜岡原発より、玄海1号炉のほうがはるかに危険というのだ。
    その根拠として井野教授があげるのが、次の数字である。
    35℃('76年)、37℃('80年)、56℃('93年)、そして98℃('09年)。九州電力が公表した玄海1号炉の「脆性遷移温度」の推移である。
   「ひと言で言えば、圧力容器そのものが劣化し、いつ"破断"してもおかしくない状態なのです」
    わかりやすく説明しよう。冷えたガラスのコップに熱湯をいきなり注ぐと、コップは割れるかひびが入ってしまう。これはコップの内側と外側で急激に温度が変わり、その差にガラスが耐えられなくなってしまったからだ。
   原子炉の場合は逆だ。常に高温に晒された原子炉に冷えた水がかかると、やはり急激な温度差に耐えられず、金属が破断してしまう。この変化にどこまで耐えられるかが「脆性遷移温度」だ。要は、98℃の水が原子炉にかかると、破断する危険性があるのだ。
   「私はわかりやすい例としてタイタニック号の沈没をあげるんです。タイタニック号の船底や外板の鉄は質が悪く、27℃程度で破断する状態だっ た。冷え切った海を航海していて、そこに氷山がぶつかった。その衝撃が想像以上に船を破壊したため、世界最大の船があっという間に沈んでしまったんです」
    原子炉は常に炉心から放出される中性子が炉壁に当たっている。このダメージが積もり積もって、圧力容器がどんどん脆くなっていくのだという。
   「玄海原発1号機の原子炉は陶器のようなもので、簡単にひび割れ、破断してしまう。もし現実になれば、炉心の燃料棒が吹っ飛ぶような大爆発を引き起こす可能性もあります」(井野氏)
    98℃という温度は、そんな最悪のシナリオをリアルに予感させるものだという。


eirene’s memories
2011-07-02■[放射能]老朽化原発の恐怖 危険度最悪は玄海1号機
http://d.hatena.ne.jp/eirene/20110702


 本日の東京新聞・特報面は、先週の週刊現代と同じく、井野博満・東大名誉教授に取材し、原子炉の中性子照射脆化が進んだ、玄海原発1号機の危険性を警告している。
    下記に記事を引用する。
    万一、玄海原発1 号機が制御不能になって爆発したら、2、3、4号機も一緒に制御不能になるのではないか。すべての原子炉が爆発し、放射性物質が風に乗って日本全土に拡散 したら、佐賀県、九州どころか、日本そのものが滅びるだろう。原発事故難民となった日本人は国を捨て、世界中に散って生きることになる。
    そのようなリスクをかかえているのに、玄海1号機を運転し続けるのは、狂気の沙汰としか思えない。玄海1号機は出力55万キロワットの原子 炉だ。廃炉にしても、国民生活にたいした影響は出ないはずだ。電気のために、国を滅ぼすリスクをはらんだ選択をするのは道理に合わない。
   
   原子炉が割れる 玄海1号機危険度最悪
    原発の原子炉がガラスのコップのように割れてしまったら-。日本の原発ではその危険性が高まっていると警告する科学者がいる。もし、そうな れば、核反応制御不能となって大爆発を起こし、大量の放射性物賞が広範囲に拡散する。福島第一原発事故の比ではない大惨事となりかねない。危険度トップは玄海原発1号機だ。(小国智宏)
   「日本で一番危険な原子炉は、九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)です」。こう断言するのは、井野博満・東大名誉教授(七三)=金属材科学=だ。
    玄海原発2 号機、3号機は現在、定期検査のため運転を停止中。海江田万里経済産業相が早期の再稼働を求めたのに対し、地元の古川康佐賀県知事らは容認する姿勢を示し ている。2、3号機の再稼働には批判の声が出ているが、井野氏は運転中の1号機についても大きな問題があるというのだ。
    原発は地震や事故など異常が起こると運転が停止し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が働いて、原子炉を急速に冷やす仕組みになっている。福島 第一では、電源を喪失してこのECCSがうまく作動せず、事故に至った。ところが玄海1号機ではECCSが働いた場合、逆に大きな事故が起きる可能性があ るという。
    玄海1号機の運転開始は三十六年前の一九七五年で、九州電力の原発の中では最も古い。
    井野氏は言う。「1号機の原子炉圧力容器の鋼の壁は老朽化でもろくなっている。急速に冷やした場合、破損する恐れがあるのです」
   ガラスコップが壊れるイメージ
    井野氏が例えるのは、ガラスのコップだ。熱いコップに冷たい水を急に入れると、内側と外側の急激な温度変化に耐えられずバリンと割れてしまうことがある。同じような現象が圧力容器にも起こり得るという。
    圧力容器の内壁は、核分裂で発生する中性子線にさらされている。鋼は中性子線を浴びるほどもろくなっていく。柔軟性を損ない、人の血管が動脈硬化で破れやすくなってしまうのと同じことが起きる。
    通常、鋼はある程度の力を加えても変形するだけで割れることはない。しかし、ある温度を下回ると、陶器のようにパカンと割れてしまう。この温度を脆性遷移温度という。もろくなればなるほどこの温度は上がる。
    井野氏によると、北大西洋を航行中に沈没したタイタニック号は、質の悪い鋼材が使われていて脆性遷移温度は二七度だったという。そして氷山に衝突した衝撃で船体は割れてしまった。
    電力会社は、原発の耐用年数を推測するため、この脆性遷移温度を調べている。圧力容器の内壁のさらに内側の位置に圧力容器と同じ材質の試験 片を四~六組ほど設置。数年から十数年ごとに取り出して検査する。内壁より炉心に近い位置に設置してあるため、中性子の照射量が大きくなり、脆性が早く進 む。試験片を調べ、将来のもろくなった状態を予測するのだ。
    玄海1号機の圧力容器の脆性遷移温度はどうなのか。
    七五年の運転開始時はマイナス一六度だったのが、七六年に三五度、八〇年に三七度、九三年に五六度と徐々に上昇してきた。「ここまでは、ほ ぼ予想通りでした。衝撃的だったのは昨年十月に九州電力が公表した二〇〇九年四月時点の温度です」。何と九八度に跳ね上がっていたのだ。玄海1号機のよう な加圧水型軽水炉では、圧力容器内を一五〇気圧、三〇〇度以上の高温高圧で運転している。容器に亀裂が入れば、爆発的な破壊に発展し、大量の放射性物質を 放出することになる。想像を絶する惨事が引き起こされる。
   保安院に九州電調査結果伝えず
    井野氏らは、昨年十二月、経産省原子力安全・保安院に説明を求めたところ、「驚いたことに、保安院はその時点で何の情報も持っていなかった。九州電力は『報告する義務はない』として知らせていなかったのです」。
    なぜ、玄海1号機の数値は急激に上がったのか。
    井野氏は「鋼の中の銅の含有率が高かった可能性がある。部分によって材質にむらのある欠陥炉の疑いもある」とみる。「原因を調べるために、試験片を大学などに提供し、ミクロ組織の検査を行うべきです。少なくともその結果が分かるまで原子炉は止めるべきです」
    九州電力が〇三年に提出した報告書の予測曲線によると、玄海1号機の脆性遷移温度は六五度程度、誤差を入れても七五度前後のはずだった。九八度は、修正した予測曲線からも大きくはずれている。
    九州電力広報部は「試験片の九八度というのは、六十六年運転した場合の想定温度。容器本体は八〇度と推定している。六十年運転想定では九一度になる。日本電気協会の定めた新設炉の業界基準九三度を下回っている」と説明。「安全上の問題はない」と主張する。
    しかし、井野氏は「予測曲線からあまりにもはずれている。予想式はあてにならなくなっている。根本的に見直し、安全検査を徹底すべきだと訴える。
    玄海1号機と同じ問題を抱える老朽原発は、ほかにもある可能性が高い。井野氏はこの点を強く危惧している。
    「日本の原発は米国に十年以上遅れて営業運転を始めた。一九六〇年代に運転を開始した米国やドイツの原発は、今ではすべて閉鎖されている。このために日本の原発は老朽化の先頭を走っています」
   寿命の延長など老朽化原発多数
    原発は当初、三十~四十年の寿命を想定して設計されていた。七〇年に営業運転を始めた敦賀原発1号機は、二〇一〇年には閉鎖になるはずが、 そうはなっていない。住民の反対運動などで新規建設が困難になったことや、既存の原発を延命した方が安上がりということなどから、国は寿命を延長する方針 を決めたのだ。
    三十年を超えた原発について、電力会社は国に老朽化対策の報告書を提出し、高経年化対策検討委員会で審議して認められると、十年ごとに最長六十年までの延長が可能になる。
    玄海1号、敦賀1号、美浜1~3号、福島第一1~6号など二十基近くの原発が三十年以上運転されている。敦賀1号、美浜1号、福島第一1号は四十年を超えての運転が既に認められている。今後は五十年、六十年の運転を目指す原発が出てくるかもしれない。
   「無理な運転は傷みもひどく」
    井野氏は「老朽化すれば、故障やトラブルが増え、メンテナンスが大変になるのが普通。無理な運転をすれば傷みもひどくなる」と指摘する。
    玄海1号の九八度はワーストで、五〇度以上の原発は七基ある。ただ、試験片を十年以上検査していない原発もある。
   「検査をすれば、玄海1号と同じように脆性遷移温度が跳ね上がる圧力容器はほかにもある可能性は否定できない」
    井野氏はあらためて警告する。「全国の老朽化した原発を早急に総点検し、予測以上の脆化を示した原子炉はすぐに廃炉にすべきだ」
   
佐賀新聞も、昨日の記事で取り上げていた。九州大応用力学研究所・渡邉英雄准教授(照射材料工学)のコメントを紹介している。
       http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1968174.article.html
   玄海原発1号機 想定以上に劣化進行か
    運転開始から36年が過ぎた九州電力玄海原子力発電所(佐賀県東松浦郡玄海町)1 号機の原子炉圧力容器の劣化を判断する指標となる「脆性(ぜいせい)遷移温度」が大幅に上昇、大学の研究者らは異常として問題視し、最悪のケースとして容 器破損の可能性にも言及している。九電や国は「安全性に問題ない」と反論。研究者は検証のためのデータ開示を求めるが、九電は「業界規程に基づいて適正に 検査しており、検証しても結果は同じ。40年目の高経年化評価時にデータを公表する」としている。
    鋼鉄製の原子炉圧力容器は中性子を浴びるともろくなる。電力各社は老朽化を把握するため容器内に同じ材質の試験片を置いて取り出し、緊急冷却した場合などに容器が壊れやすくなる温度の境目となる脆性遷移温度を測っている。劣化が進むほど温度は高くなる。
    九電によると、運転開始時の1975年の脆性遷移温度は零下16度。これまで4回取り出した試験片の温度は、35度(76年)、37度(80年)、56度(93年)と推移し、2009年は98度に大幅上昇した。
    九電は「試験片は圧力容器よりも多く中性子を浴びる場所に置き、数十年後の圧力容器の劣化状況を予測するためのもの。98度は2060年ご ろの数値に当たる」と説明。「圧力容器の現在の脆性遷移温度の推定は80度で、60年間運転した場合でも91度」とし、日本電気協会が定める新設原子炉の 業界基準93度を下回っていることを強調する。26日の県民説明会でこの問題を質問された経産省原子力安全・保安院も同様の説明をして「容器が壊れるような状況にはない」と答えた。
    ただ、こうした見解に研究者は疑問を示す。九州大応用力学研究所の渡邉英雄准教授(照射材料工学)は「上昇値は本来の予測値から大きくず れ、誤差の範囲を超えている。原子レベルで想定外の異常が生じている可能性がある」と指摘。井野博満東大名誉教授(金属材料学)は中性子の影響を受けやす い不純物が含まれるなど材質が均一でない可能性を指摘したうえで、「緊急冷却で急激に温度を下げた場合、圧力容器が壊れる可能性がある」とする。
    研究者は試験片や検査データが開示されていないため詳しい検証ができないとし、電力各社に情報開示を求める意見も強いが、九電は「今後も安全な数値で推移すると判断しているので、すぐにデータを提示する必要はない」としている。

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